女の涙
歌の発表会用に、相方の母上がドレスを作ってくれた。
母上は現役で舞台衣装を作っている。
つまり、本職の手による本物ドレスなのだ。
なんて贅沢な!
当日、会場についてみたら、リハーサルで同じ舞台に立った子たちに、
ドレスの子など1人もいなかった。
プゥコだけ、まるでお城の舞踏会のようだ。
うーん、やはり先生に事前に雰囲気を聞いておくのだった…と、思ったら、
後からおくれてきた子が、カラフルなドレスだ姿だったので、ほっとひと安心。
これでプゥコのシフォンとオーガンジーのドレスも浮かないだろう。
ほっとして、思わず本音がでてしまった。
「かわいいドレスだね!ブレスレットまでしたの!?オシャレだなぁ!」
などなど、その子をうっかりいっぱい褒めてしまった。
これを隣で聞いていたプゥコがカンカンに怒った!
これが本番直前。
プゥコはその子につかみかかろうとした。
阻止されると今度は自分のドレスをむしったり、
頭のコサージュをもぎとったり!
あわてて会場の外へ連れ出し、説得にかかる。
プゥコはウォンウォンくやしそうに泣いている。
プ「おかーしゃんが○○ちゃんをかわいいってゆった(泣)
プゥコのドレスいや!」
私「プゥコのはお店で売ってない世界でひとつのドレスなんだよ。
お母さんにとってプゥコが一番かわいいに決まってるじゃないの。」
ところが、こんな言葉は全くプゥコを動かさなかった。
あふれる涙は止まらない。ドレスはぐしょぐしょだ。
1番目の出演者が、ステージにスタンバっている。
開演の挨拶もはじまってしまった。
プゥコの出番まであと10分を切った!
そこで、あまり言いたくはなかったけど…
私「○○ちゃんのドレスはいろんな色を使いすぎなの。(○○ちゃん!ごめん!)
プゥコは水色で統一感があって、ありのままのエルサみたいだよ。」
これでプゥコの泣き声がピタリと止まった。
プ「そうだよねぇ!○○ちゃんかっこわるいよねぇ!
プゥコのは頭も水色で、リボンも水色で、全部水色で、
こっちのほうがいいよねぇ!」
私「そうね…。」
プ「じゃぁ、○○ちゃんにかっこわる〜い!って言ってくる!」
私「あ、それは言わないで。この話はここだけの秘密。」
プ「やだ!言う。」
私「キャンディ食べる?」
プ「うん!食べる!」
こうして、必死でご機嫌をとって、本番へ。
本番はバッチリ笑顔で歌っていました。